バングラデシュで事業を始める手順
——実際に登録した日本人が語るリアルな費用と4ヶ月の道のり

営業許可証・DCCI・BIDA・BIN・IRC——聞いたこともない略語の数々と向き合いながら、実際にバングラデシュで中古車輸出事業を立ち上げた。総費用22万2,000タカ、期間4ヶ月。「個人事業(Proprietorship)」という選択をした理由と、その全プロセスを正直に公開する。

「バングラデシュで会社を作るには何が必要か」——ネットで調べても、英語の制度解説か、ありきたりな進出ガイドしか出てこない。実際に登録した人間が、実際の費用・期間・苦労を公開している情報はほとんど存在しない

本記事では、実際にバングラデシュで中古車輸出ビジネスのための事業登録を行った実体験を、すべて正直に公開する。

4ヶ月
登録完了までの
期間
222,000
総費用(タカ)
※弁護士費用別
Proprietorship
選択した
事業形態

01なぜ「個人事業(Proprietorship)」を選んだのか

バングラデシュで事業を始める際、まず決めるべきは事業形態だ。主な選択肢は個人事業(Proprietorship)・パートナーシップ・株式会社(Private Limited Company)の3つ。

「私たちの事業は個人事業(Proprietorship)として運営されました。主な理由は、事業に必要な書類や許可証の多くが現地パートナーの母親の名義であったためです。また、この形態は比較的簡単で運営しやすいため選択しました。」
実体験談・バングラWIRE取材

つまり「現地の信頼できる人物名義で個人事業を立てる」という形だ。これは外国人が単独で株式会社を立てるよりもシンプルだが、その分「誰の名義で事業を行うか」という信頼関係が事業の根幹になる。前回の記事で触れた「現地ネットワークが命」という話が、ここでもそのまま当てはまる。

バングラデシュの主な事業形態
  • 個人事業(Proprietorship):手続きが比較的簡単。現地人名義での運営が基本。今回採用した形態。
  • パートナーシップ:複数人での共同経営。出資比率や役割分担を契約で明確化する必要がある。
  • 株式会社(Private Limited Company):外国人が本格的に進出する場合の標準形態。RJSC(会社登記局)への登録が必要で、より複雑だが法人としての信用度は高い。

02登録までの4ヶ月——タイムライン

事業登録および関連する手続きを完了するまで約4ヶ月かかった。

1ヶ月目
営業許可証(トレードライセンス)の取得——事業の基本となる許可証。地域の営業許可事務所へ申請。
2ヶ月目
DCCI(ダッカ商工会議所)登録——商工会議所への会員登録。事業の信用度を示す重要な登録。
2〜3ヶ月目
BIN(納税者識別番号)取得——税務署での納税者登録。後述するが、最も時間がかかったプロセスのひとつ。
3〜4ヶ月目
BIDA(バングラデシュ投資開発庁)登録・IRC取得——投資関連登録と輸入許可証(Import Registration Certificate)。最も複雑な手続き。

03訪問が必要だった政府機関

「私は営業許可事務所とBARVIDA(BIDA)事務所を訪問しました。その他の手続きの多くは弁護士が代行しました。」
実体験談・バングラWIRE取材

重要なのは、すべての手続きに本人が出向く必要はないという点だ。弁護士に代行してもらえる手続きは多く、本人が直接対応すべき場面(直接の本人確認・面談が必要な場面)は限られていた。これは時間の節約という意味で非常に大きい。

04一番大変だったBIN・BIDA手続き

「BIN証明書の取得およびBIDA関連の手続きが最も複雑で時間がかかりました。」
実体験談・バングラWIRE取材

BIN(Business Identification Number)は税務上の登録番号で、輸出入ビジネスには必須。BIDA(Bangladesh Investment Development Authority)は投資関連の許認可を管轄する機関で、特に外国資本が関わる事業では重要な手続きとなる。

時間がかかる手続きへの心構え
  • BIN・BIDA関連は書類の往復・確認に時間がかかる。「すぐ終わる」と思わないこと
  • 4ヶ月という期間も、迅速に進んだケースの方だと考えるべき
  • 事業開始のスケジュールには、必ず数ヶ月のバッファを設定する
  • 弁護士が手続きの進捗を把握しているため、定期的に確認を取ることが重要

05弁護士の役割と費用

「はい、弁護士の支援を受けました。弁護士費用は約15,000タカでした。」
実体験談・バングラWIRE取材

弁護士費用約15,000タカ(約19,000円)は、バングラデシュの事業登録手続き全体を考えると非常に「コスパが良い」投資だ。複雑な行政手続きの多くを代行してもらえることを考えれば、弁護士を雇わない選択肢はほぼないと言っていい。

06外国人投資の規制について

「事業の所有者が現地パートナーの母親であったため、外国投資に関する特別な制限や複雑な手続きはありませんでした。ただし、外国人パートナーと共同事業を行う場合は、BIDA登録など追加の手続きが必要になる可能性があります。」
実体験談・バングラWIRE取材

これは非常に重要なポイントだ。事業の名義人が現地人(バングラデシュ国民)である場合、外資規制の対象外となり手続きがシンプルになる。一方で、外国人が直接出資者・パートナーとして名義に入る場合は、BIDA登録などの追加手続きが必要になり、手続きはより複雑化する。

「お金を出すのは日本人、実務を動かすのは現地パートナー」——この役割分担は、手続きの簡略化という観点でも合理的な選択になり得る。ただしその分、現地パートナーへの信頼が事業の根幹になる。

07総費用——全項目を公開

登録料・ライセンス料を含めた総費用を、すべて公開する。

項目 費用(タカ) 円換算目安 内容
営業許可証(トレードライセンス) 50,000 約64,000円 事業の基本許可証
DCCI(ダッカ商工会議所) 50,000 約64,000円 商工会議所登録
BIDA(BARVIDA) 70,000 約90,000円 投資開発庁登録
BIN(納税者番号) 2,000 約2,600円 税務登録番号
IRC(輸入許可証) 50,000 約64,000円 輸入業務の許可証
総費用(弁護士費用除く) 222,000 約284,000円
弁護士費用(別途) 15,000 約19,000円 手続き代行
総合計 237,000 約303,000円

※1BDT≒1.28円換算(2026年6月時点)。費用は個人事業(Proprietorship)形態の実例であり、株式会社設立の場合は異なる。

08これから始める人へのアドバイス

「バングラデシュで自動車ビジネスを始める場合は、まず市場を十分に調査・分析することが重要です。市場需要、競合他社の状況、利益率、リスクなどを理解した上で、十分な資金を用意して計画的に投資するべきです。また、誠実さと透明性を重視し、長期的な信頼関係を築くことが事業成功の鍵となります。」
実体験談・バングラWIRE取材
事業登録を検討する人へ——実践チェックリスト
  • 事業形態を最初に決める:個人事業・パートナーシップ・株式会社のどれが自分の状況に合うか、弁護士と相談して早めに決定する
  • 信頼できる現地パートナーを見つける:名義・手続き・現地対応すべてにおいて、パートナーの信頼性が事業全体を左右する
  • 弁護士は必須コストと考える:1.5万タカ程度の弁護士費用は、複雑な行政手続きを考えれば十分に安い投資
  • スケジュールに4〜6ヶ月のバッファを持つ:「すぐ始められる」という前提でスケジュールを組まない
  • 総費用22万タカ+αを予算化する:登録費用だけでなく、その後の運営資金も含めた資金計画を立てる
  • 市場調査を先に行う:登録後にビジネスを考えるのではなく、登録前に市場・競合・利益率を把握しておく

09よくある質問(FAQ)

バングラデシュで事業を始めるにはどんな形態がありますか?
個人事業(Proprietorship)、パートナーシップ、株式会社(Private Limited Company)などの形態があります。外国人が単独で事業を行う場合は株式会社設立が一般的ですが、現地の人物名義で個人事業を行うケースもあります。事業に必要な許可証類が現地パートナー名義であれば、個人事業形態が比較的シンプルです。
バングラデシュで事業登録にどれくらいの費用がかかりますか?
個人事業の場合、営業許可証(トレードライセンス)約5万タカ、DCCI登録約5万タカ、BIDA登録約7万タカ、BIN(納税者番号)約2千タカ、IRC(輸入許可証)約5万タカで、総額約22万タカ(約28万円)が一例です。これに弁護士費用(約1.5万タカ)が別途かかり、合計で約23.7万タカ(約30万円)程度になります。
バングラデシュで事業登録にどれくらい時間がかかりますか?
実例では登録完了まで約4ヶ月かかりました。BIN証明書の取得とBIDA関連の手続きが最も時間を要しました。外国人が直接出資者として関与する場合はBIDA登録などの追加手続きが必要になり、さらに時間がかかる可能性があります。スケジュールには十分なバッファを持つことをお勧めします。
バングラデシュで外国人が事業を始める際、規制はありますか?
事業の名義人が現地国民である場合、外資規制の対象外となり手続きはシンプルになります。一方で外国人が出資者・パートナーとして名義に直接入る場合は、BIDA登録など追加の手続きが必要になります。どちらの形態を選ぶかは、信頼できる現地パートナーの有無や事業の規模によって判断すべきです。

10まとめ

バングラデシュでの事業登録は、「複雑だが、不可能ではない」という言葉が最も正確だ。

この記事のまとめ
  • 個人事業(Proprietorship)形態を選択。現地パートナー名義のため外資規制対象外でシンプルに
  • 登録完了まで約4ヶ月。BIN・BIDA関連が最も時間を要した
  • 本人が訪問したのは営業許可事務所とBIDA事務所のみ。他は弁護士が代行
  • 弁護士費用は約15,000タカ——複雑な手続きを考えれば「安い投資」
  • 総費用は約222,000タカ(弁護士費用別)、合計約237,000タカ(約30万円)
  • 市場調査・資金計画・誠実さと透明性が、登録後の事業成功の鍵
この記事を書いた人
BW
バングラWIRE編集部
事業登録・実費用公開
バングラデシュでの中古車輸出事業のための事業登録を実際に行った経験をもとに作成。すべての費用・期間は実体験に基づく一次情報です。2026年6月時点。