「バングラデシュで日本の中古車が高く売れる」という話を聞いたことがある人は多いだろう。しかし実際にどの車種が・いくらで・なぜ売れるのかを正確に知っている人は少ない。この記事では、実際にオークションで仕入れてバングラデシュに2台輸出・販売した経験をもとに、現地市場のリアルを包み隠さず書く。
01バングラデシュに新車ディーラーは存在しない
まず多くの日本人が知らない基本的な事実から始めよう。バングラデシュにはトヨタの正規ディーラーが存在しない。ホンダも、日産も、スズキも——日本の主要自動車メーカーの正規販売網は事実上機能していない。
つまりバングラデシュ国民は、新車を買いたくても買えない環境にある。必然的に中古車市場が「新車市場」の代わりを果たしている。日本でほとんど走っていない低走行距離の車がバングラデシュに届くと、それは実質的に「新車」として扱われる。これがこの市場の根本的な構造だ。
02人気車種と現地価格——5ナンバーが鍵
一般層に人気の5ナンバー車
バングラデシュで売れる日本車には明確なパターンがある。一般層向けの人気車種はすべてトヨタの5ナンバー車だ。
| 車種 | 分類 | 現地価格目安 | 円換算目安 |
|---|---|---|---|
| トヨタ エスクァイア | 一般〜中間層 | 約270万 BDT | 約345万円 |
| トヨタ カローラアクシオ | 一般層 | 約130万 BDT | 約166万円 |
| トヨタ プレミオ | 一般〜中間層 | 約150〜200万 BDT | 約192〜256万円 |
| トヨタ アリオン | 一般〜中間層 | 約160〜210万 BDT | 約205〜269万円 |
| トヨタ カローラクロス | 富裕層 | 約430万 BDT | 約550万円 |
| トヨタ CH-R / RAV4 | 富裕層 | 約400〜500万 BDT | 約512〜640万円 |
| トヨタ ヤリスクロス | 富裕層 | 約350〜420万 BDT | 約448〜538万円 |
※価格は年式・走行距離・状態によって大きく変動。1BDT≒1.28円換算(2026年5月時点)
年間中古車輸出台数
圧倒的なシェア
トヨタ正規ディーラー数
03なぜ日本車・右ハンドルなのか
バングラデシュで日本車が圧倒的なシェアを持つ理由は複数ある。
- 左側通行=右ハンドル:バングラデシュはイギリス植民地時代の影響で左側通行。右ハンドルの日本車が自然と適合する。
- 品質・信頼性への絶大な信頼:「日本車は壊れない」という評価が定着。中古でも日本車を選ぶのはこの信頼感から。
- 部品調達のしやすさ:トヨタ部品は現地の非正規業者が大量に扱っており、修理・メンテが比較的しやすい。
- ステータスシンボル:特にSUV系は「成功の証」として富裕層に好まれる。日本車ブランドが富と結びついている。
- 右ハンドル車の供給源として日本が最大:右ハンドルの中古車を大量に供給できる国は日本・オーストラリア・イギリスなどに限られ、品質と価格のバランスで日本が勝る。
04関税の仕組み——排気量1500cc以下が有利
バングラデシュの中古車輸入には高い関税が課される。しかし排気量によって関税率が大きく変わる——これが人気車種を理解する上で最も重要な鍵だ。
排気量1500cc以下(日本の5ナンバー規格に相当)の車は、それ以上の排気量の車と比べて関税負担が低くなる。だからカローラアクシオ・プレミオ・アリオン・エスクァイアなど1500cc以下のトヨタ車が現地で「コスパが高い車」として圧倒的に売れる。
05実際に2台輸出してわかったこと
ここからが本番だ。実際にオークションで仕入れてバングラデシュに輸出・販売した経験から得た一次情報を共有する。
仕入れから輸出まで
車の仕入れは日本国内のオークション経由。輸出した車種はエスクァイアとカローラアクシオの2台だ。どちらも5ナンバーで、バングラデシュで需要が高い車種を狙って選んだ。
利益と現実
1台あたりの利益は約15万BDT(約19万円)。悪くない数字に見えるが、これは現地の知人ネットワークがあって初めて実現できた数字だ。現地に信頼できる人間がいないと、そもそも売れない。
06輸出ビジネスの現実——失敗談も含めて
成功談だけを書くのはフェアじゃない。実際に経験して痛感した「現地で売ることの難しさ」を正直に書く。
- 情勢の変化が激しすぎる:政治・経済情勢が急変する国なので、仕入れた時と売る時で市場環境が大きく変わっていることがある。2024年のデモはまさにその典型だった。
- 価格の乱高下:為替(タカ安)・関税政策の変更・競合業者の価格破壊などで、市場価格が読みにくい。仕入れ価格と売値の計算が狂うことがある。
- 問い合わせは来るが買わない:バングラデシュ人は問い合わせを非常に積極的にしてくる。しかし実際に購入まで至る割合は低い。「検討する」が「買う」を意味しない文化的背景がある。
- 他業者の価格破壊:参入業者が増えると価格競争が激化し、利益が圧縮される。特に人気車種は競合が多い。
- 現地の買い手ネットワークが命:現地に信頼できる人間がいないと売れない。「オークションで買って輸出すれば儲かる」という単純な話ではない。
07これから参入する人へ——正直なアドバイス
- まず現地に人脈を作れ:買い手・現地パートナーなしには成立しない。渡航して関係を作ることが最初のステップ。
- 5ナンバー・トヨタに絞れ:需要が最も安定しているのは1500cc以下のトヨタ車。最初はここから始めるのが無難。
- 情勢を常にウォッチせよ:政治・為替・関税政策の変化を常にチェックする。バングラWIREを読め(笑)
- 1〜2台の小規模から始めよ:いきなり大量仕入れはリスクが高い。まず小規模で市場感覚をつかむ。
- 利益計算は保守的に:関税・輸送費・現地手数料・為替変動を全部計算した上で利益が出るか確認する。
08よくある質問(FAQ)
09まとめ
バングラデシュの中古車市場は、日本人にとって確かにビジネスチャンスがある。しかし「簡単に儲かる」という話ではない。
- バングラデシュにはトヨタ正規ディーラーが存在しない。日本の中古車が「新車」の代わりを果たしている。
- 人気車種は排気量1500cc以下のトヨタ5ナンバー車(アクシオ・プレミオ・アリオン・エスクァイア)。
- 富裕層向けにはカローラクロス・CH-R・RAV4・ヤリスクロスなどのSUV。
- 5ナンバー車が売れる理由は関税が低く現地価格が抑えられるから。
- 実際に2台輸出して1台あたり約15万BDT(約19万円)の利益。ただし現地ネットワークがあってこそ。
- 情勢の乱高下・価格競争・「問い合わせは来るが買わない」文化が参入の壁。
- 現地に信頼できる人間を作ることが成功の最低条件。