「バングラデシュは人件費が安い」——これは事実だが、それだけでは正確ではない。職種・経験・エリアによって給与は10倍以上開く。縫製工場の作業員と大手企業のITエンジニアでは、まったく別の経済世界に生きている。
日本企業がバングラデシュで人材を雇用する場合、投資家がコスト感覚を掴む場合、あるいは現地パートナーと交渉する場合——いずれも給与の実態を知ることは必須だ。本記事では現地からの一次情報をもとに、バングラデシュの給与事情を正直に解説する。
日給(タカ)
最低賃金(タカ/月)
月収上限(タカ)
01バングラデシュの給料——まず数字で把握する
現地からの情報によると、バングラデシュの日雇い労働者の日給は800〜1,000タカ(約1,000〜1,300円)。月給換算すると約20,000〜25,000タカになるが、日雇いは毎日仕事があるわけではない。
月給制の仕事は、仕事の種類によって8,000〜30,000タカ程度が一般的な水準だ。ただしこれは一般的な「ブルーカラー〜一般事務」レベルの話であり、専門職・管理職・IT職になると桁が変わる。
02職種別給与一覧——現地一次情報
| 職種 | 月収(タカ) | 円換算目安 | 備考 |
|---|---|---|---|
| 日雇い労働者 | 800〜1,000/日月換算:約20,000〜25,000 | 約1,000〜1,300円/日 | 農業・建設・雑役など |
| 縫製工場(一般作業員) | 15,000〜20,000最低賃金:12,500タカ | 約19,000〜26,000円 | 残業・年9%昇給あり |
| 縫製工場(管理職) | 100,000以上 | 約128,000円以上 | ライン管理者・工場長クラス |
| ITエンジニア(新卒) | 30,000〜50,000 | 約38,000〜64,000円 | ソフトウェア・IT専門職 |
| ITエンジニア(3〜5年) | 80,000〜150,000 | 約102,000〜192,000円 | 経験者・スペシャリスト |
| ITエンジニア(シニア) | 250,000以上 | 約320,000円以上 | 外資系・多国籍企業勤務 |
| 公立小学校教師 | 19,000〜22,000基本給:11,000タカ | 約24,000〜28,000円 | 各種手当込み |
| 大学講師(国立) | 53,000〜55,000 | 約68,000〜70,000円 | 各種手当込み |
| 私立学校教師・EdTech | 40,000〜150,000 | 約51,000〜192,000円 | 実績・学校格による |
| 医師(公立病院) | 40,000〜45,000 | 約51,000〜58,000円 | 医療職9級・各種手当込み |
| 医師(私立・開業医) | 150,000〜500,000以上 | 約192,000〜640,000円以上 | 経験・専門科による |
| 公務員(BCS・9級) | 約40,000基本給:22,000タカ | 約51,000円 | 各種手当込み |
| 公務員(秘書官・1級) | 約120,000基本給:78,000タカ | 約154,000円 | 最高位・各種手当込み |
※1BDT≒1.28円換算(2026年6月時点)。金額は目安であり年式・経験・会社規模により変動。出典:現地一次情報・バングラデシュ政府給与スケール
03ダッカと地方の給料差
バングラデシュ国内でも、ダッカと地方では給料に大きな差がある。
ダッカで高い給料をもらっていても、家賃・交通費・物価が地方より大幅に高いため、実質的な生活水準は必ずしもダッカが有利とは言えない。一方でIT・外資系のキャリアを積むにはダッカ以外の選択肢がほぼないのが現実だ。
04日本との比較——どれくらい違うのか
日本の平均年収は約478万円、月換算で約305,000タカ相当だ。バングラデシュと比べると以下のようになる。
この差は単純に「バングラが安い」ではなく、生産性・物価・生活水準の差も反映している。ただしビジネス目線では、この給与差が日本企業にとってのコスト優位につながることは間違いない。
05バングラデシュで普通に生活するのにいくら必要か
約32,000〜45,000円
約77,000〜102,000円
約192,000円超
約32,000〜45,000円
興味深いのは、ダッカ一人暮らしと農村4人家族の生活費がほぼ同額という点だ。農村では家賃がほぼかからず食費も安いため、都市と地方で生活コストが大きく違う。
06日本人ビジネスパーソンへの示唆
- IT人材はコスパが高い:経験3〜5年のエンジニアで月80,000〜150,000タカ(約10〜19万円)。日本の同レベルの人材の5〜10分の1のコストで優秀な人材を確保できる。
- 縫製・製造は最低賃金に注意:最低賃金12,500タカは政府が定めた下限。遵守は必須であり、コスト削減のために下回ることは許されない。
- ダッカ採用が基本:専門職・管理職を採用するなら実質的にダッカ限定。地方在住の優秀な人材も存在するが、ダッカへの転居意欲は高い。
- 給料以外のコストも考慮:ボーナス(イード手当×2回)・残業代・交通費補助など、基本給以外のコストが発生する。
- インフレで給与上昇圧力:9%前後のインフレ下では、生活費上昇に伴う賃上げ要求が強まる。採用時から昇給計画を持つことが重要。
07よくある質問(FAQ)
08まとめ
バングラデシュの給与は、一言では語れないほど職種間の格差が大きい。縫製工場の最低賃金12,500タカと、シニアITエンジニアの250,000タカ以上——同じ国に20倍の賃金差が存在する。
- 日雇い労働者:800〜1,000タカ/日(約1,000〜1,300円)
- 縫製工場一般作業員:15,000〜20,000タカ/月(最低賃金12,500タカ)
- ITエンジニア(新卒):30,000〜50,000タカ、中堅:80,000〜150,000タカ
- 医師・上級公務員:40,000〜500,000タカ以上(職種・立場による)
- ダッカは地方より40〜60%高いが、生活費も高い
- 日本の最低賃金2日分=バングラ縫製工場1ヶ月の最低賃金
- ダッカ一人暮らしの生活費:25,000〜35,000タカ/月